5月末から6月の初旬、ピレネーへ出かけていた。
この山脈には今までアリエージュ方面に二回、バスク地方に一回訪れている。バスクで見られたハゲワシの姿が忘れられなくて、再び行きたくなった。
出来れば数少ないヒゲワシもスケッチしたかった。
5月30日にユルドス村に到着。野宿するつもりだったが、土砂降りで仕方なく安宿を取ったが、結局は正解だった。予報に反してこの雨が五日間も続いたのである。おまけにこの宿、飯が安くて美味かった。
到着した翌日、雨が上がりそうにないのでスペイン側へ行ってみた。スペインと言ってもユルドスからバスで20分ほどである。長いトンネルを抜けると、快晴だった・・と期待してたが、こちらも雨。しかし晴れ間も少し見え、何となく気分が良い。
カンフランという村でこれまた美味い定食を食べた後、トレイルをしばらく歩く。川沿いの草むらではアミガサユリの仲間が咲いていた。フランスで見る赤紫色でなく黄緑が混じった花である。後で調べて判ったが、ピレネー周辺の特産種、Fritillaria nigra, syn. Fritillaria pyrenaicaであった。
翌日もカンフランへ。
今回はトンネルを抜けたら晴れていた。ユルドスでは相変わらず雨だったので、僅か20キロメーターほどで天候が全く違うことになる。
カンフランでチーズとパンを買って、トレイルに入る。今日は快晴だから山沿いの道をどんどん歩ける。一時間もしないうちに上空に飛翔している大きな猛禽が見えてきた。翼が異様に長くて尾は短く、頭部は細長い。シロエリハゲワシである。
上昇気流を巧みに利用して悠々と飛んでいる。その高い崖周辺では帆翔しやすいらしく、5・6羽が観察できた。他にもアカトビ、キバシガラス、ワタリガラスなどが飛んでいた。
帰り道、林道でキバシガラスの群がかたまって、森林の梢スレスレに素早く飛んでいく。おや、と思っていると、戦闘機みたいな中型の猛禽がすぐ後を追っていた。ハヤブサだ。
カラスたちは逃げ切って森の彼方に消えた。ハヤブサは谷間に抜けて、速度を落として上昇し、ゆっくりと飛び去った。
この日の収穫があまりに多かったので、その後に短かったがアラゴン地方の南まで行ってみた。ハカという町からサビーニャニゴに抜けて、ヒメクマタカやヒゲワシを観察できた。おまけにバルでは美味しいワインやタパスが気軽に楽しめた。いつか又訪れたい。